短編小説
「おい、お前」 初めて地上の人間と目が合った。 綺麗な恰好をした、気の強そうな顔をしたおねえさんだった。 今が昼なのか夜なのか全くわからない、そんな地下室で私は微かに光を見た気がした。 「じゅう、にじゅう、さんじゅう…」 いつも私にご飯をくれる…
小さな石を渡された。 「おねえさん。これ、なあに?」 「これはね、“憶い出”っていうんだよ」 「…オモイデ?」 「うん」 「透明なんだね、オモイデ」 「そうだよ」 半透明のおねえさんが渡したそれを、僕は小鳥を扱うように大事に両手で抱えた。 僕のオモイ…