悴むアタマ

創作 気分転換 毎日更新できたらいいねって。

憶い出 SS

死んだら神様のパシリになりました。

今は夜な夜な他人の夢に現れて、

人に「憶い出」を渡すお仕事をしています。

 

 

「おねーさんは、死んだ人?」

 

「うん、そうだよ。高3の時かなあ」

 

「…おねーさんはなんで死んだの?」

 

「んー、なんだろね。色々思いはあったけど、結局は勢いで、かな。」

 

「へーーー、勿体無い。後悔とかしてない?」

 

 

 

 

「…してるよ」

 

 

 

嬉しいことも、悲しいことも、苦しいことも全部、

あなたとずっと共有し続けたかった。

 

もっと生きてればよかった。

 

良い時も、悪い時も、お互い支え合って。

そーゆー生き方もありだったなあ、なんてさ。

 

 

 

…もう遅い。

 

 

だから私はこうして

「憶い出」を、必要とする人に魅せている。

 

 

 

――あの人に会いたい。

 

一度だけでいい、夢で会えたら。

 

私に会わないことがあの人の幸せなのに、

私はこうも自分の幸せばかり求めてしまう。

 

あの時と変わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…最低だ」

 

 

「お、おねーさん…?」

少年が心配そうに私を見つめる。

そして、いつの間にか頬を伝っていた涕を拭いてくれた。

 

ふと、彼と目が合う。

 

「――ッ」

 

私は思わず少年を抱きしめた。

つやつやで柔らかな黒髪に顔を埋める。 

 

 

ああ、この感じ。懐かしいな

あの時の、あの人みたいだ。

 

 

 

 好きだよ、逸花。

 

ごめんね、逸花。

 

 

 

 

 

 

愛してるよ、ずっと。